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003.フランケン・ウィニー

フランケン・ウィニー /アメリカ/2012/ティム・バートン


総評

人形が「生きてますけど?」みたいな顔して映画に出てる。


あらすじ

はぁい!!!僕、ヴィクター!!!

めちゃめちゃバリバリ理系の小学生なのに父親に勧められて参加した野球で色々あって、僕の大事な大事な親友のワンちゃん・ウィニーが死んでしまったんだ!!!!!わーん!!!!

すごく悲しかったけど、理科の授業で閃いてしまった雷による蘇生技術でウィニーが蘇ったんだ!!!!サイコー!!!!!!

でも、科学のコンクールで優勝を狙ってる同級生達に蘇生技術が目をつけられてしまったんだ!!!!皆、秘密にしてるウィニーのことを知りたくて知りたくてたまらない!!!!!

僕はウィニーと一緒にいたいだけなんだ!!!!どうしよう!!!!!


感想

私は死ぬほどティム・バートン監督の世界観と作品が好きなので今回は褒めることしかしません。頼むな。


このCG、VFX、モーショングラフィックとなんでもデジタルでできるこの時代に真っ向からのアナログ宣言。

24コマ全て人形を手作業で動かし、カメラで撮っていると思うと震える。

人間の手作業とアナログな撮影環境だから絶対に手ブレ、微妙な位置ずれ、室内の環境による変化が発生するはずなのに、異常に滑らかに動く。

趣味程度ではありますが、私も一応アニメーションを作っている身。あまりの完成度の映像に自分の技術不足、人手不足、資金不足、なによりも熱量不足を思い知らされ、反省し、体が恐怖し異常をきたす。

好き過ぎて5431997673948134484回くらい見てるけど、精密なアニメーションに毎度毎度、動悸と目眩と発作を起こしながら鑑賞している。


ウィニーの動き、見ましたか!?!??!?!?完全に「この世に生を受けてますけど」みたいな顔して画面の中を動いている。

個人的に一番最初の手作り映画でハリボテの街を壊しまくるウィニーが一番可愛い。

いや、待って。電気が足りなくて落ち込んでるウィニーも可愛い。そして、体に打ち込まれたネジから電流を流されるところも可愛い。

しかし、ゴミ箱を漁るウィニーの尻尾も愛らしい。Facebookだったらいいね!ボタンを壊れるまで押してる。


フランケン・ウィニーというかティム・バートン監督作品はどれもこれも死を明るく受け入れ過ぎているので、この作品も当たり前のようにブラック。

子供達が無邪気に科学のコンクールの優勝目指して死んだ動物達を生き返らせる様に道徳は皆無。また、自分の飼い猫が蘇生実験に巻き込まれて、怪物になっても反応の薄い子供は怖くてゾクゾクする。

しかし、ウィニーとヴィクターが死すらもちょっとミスった位のものとして軽々と扱って、大事な友達であることは生きてても死んでても生き返っても、全く変わらないというところは信じられないくらい純粋だと思う。

ヴィクターのパパとママもどちらかというとウィニーが生き返って幸せ派だったし。

僕たちが仲良しで親友で一緒にいることは何よりも幸せである。と堂々と言われた気持ちになる。


誰もが倫理観に囚われて、口を揃えて映画では「不老不死は良くない」「死者を生き返らせてはいけない」というけれども。

それをぶっ飛ばして「あなたといられることの幸せが一番」と純粋に言える映画の方が私は好きだなぁと思いました。

そう、そんな幸せな気持ちをもう一度味わいたいと何度も何度もこの映画をDVDデッキにいれる。

そして、その度に人形アニメーションの完成度、技術力の高さによって生じる胸の痛み、不整脈、耳鳴り、異常な恐怖に支配されるスパイラルを繰り返している。

うっ…………。これがディズニーの…………ティム・バートン監督の力だ…………。うっ…………!!!!!

(圧倒的映像に体が焼き尽くされる音)


002.怒り

怒り/日本/2016/李相日

 

総評

胃が暴れる。

 

あらすじ

とある夫婦の殺人事件。

いまだ犯人は見つからず、手掛かりも犯人の整形手術後のモンタージュ写真のみ。

大々的なマスコミを利用したモンタージュ写真公開によって沖縄、新宿、千葉でそれぞれ身元不明の男たちが周りの人々に疑われ始める。

彼らはどこから来たのか、本当に信じられる人間なのか。

事件現場に残された「怒」の文字。

皆、何かを抱えている。

 

感想

とてつもなく趣味が合う友達がいまして、その子から見てと言われてたうちの一本。

根底に信じられない気持ちがある人間たちの信じあう姿は大変美しいですね。好きです。

ただ、苦しいからもう一回見る前には滝行をして精神を鍛えなきゃならないと思った。

 

特に千葉県民たちのエピソードがいいです。

偽名出身不明田代君と都会から帰ってきた少し頭の弱い愛ちゃんが少しずつ信じあうことで手に入らなかった家族という幸せを作っていく。

でも、愛ちゃんパパはやはり身元不明の男なんか心配。わかる。私も自分の娘がどこの馬の骨とも知れないやつと「結婚すゆ♥」とか言い出したら寝込む。さらに凶悪犯のモンタージュに似てると来た。

娘だからこそ心配して、娘を愛してくれる人を疑って不幸に進んでいくスパイラル。

愛ちゃんは田代君が話してくれた「真実」を信じようとするも結局、田代君にそっくりなモンタージュ写真に耐え切れずに警察に連絡する。愛ちゃんパパでもなく、親子の仲介をしていたおばさんでもなく、愛ちゃん自ら田代君を犯人だと疑うところに大変胃にパンチ食らう。

そして、捜査の結果、田代君は犯人でもなんでもなかったことが判明するシーンは宮崎あおいの慟哭の顔とへたり込む渡辺謙の演技がすごすぎて、「このシーンで映画終わるんだなぁ」と錯覚した。そのあと、30分くらいまだ続きがあったのだけどレコーダーがバグったのかと思って死ぬほど焦った。

音がなくとも強い強い慟哭って耳に届くんですね。

 

超絶どうでもいいけど、私の家は死ぬほど真面目家族である。

父も母も堅物であり、その二人のもとに生まれた私はハイブリット真面目堅物純情野郎。弟が若干ヤンキーだが交通ルール絶対守るし、遅刻とか絶対しない真面目ガイ。

そのため、映画の性描写シーンを皆で見ている時の沈黙ほど重いものはない。

そしてなぜこの話をしているのかというと、邦画の例外にもれず今作『怒り』も性描写シーンがめちゃくちゃ多い。ゲイの発展場のシーンがあるんですけども、不特定多数の人間がいつでも同意さえあれば性行為をする場というのは、私一家にとっては雪山に住むイエティ、頭上から降り注ぐキャトルミューティレーションへと誘う光レベルの光景です。

めちゃくちゃおやつの時間が気まずかった。

 

 今回の教訓は

『今後邦画を見る際は、まずどれくらいの頻度、感覚、長さで性描写が入るのかリサーチしてから』

です。よろしくお願いいたします。

001.ガタカ

ガタカ/アメリカ/1997/アンドリュー・ニコル

 

総評

キーボード殺人事件

 

あらすじ

遺伝子組み換え操作の試験官ベイビーが当たり前になった世の中。

人々は遺伝子の優劣で仕事や待遇が決められていた。

主人公ヴィンセントは遺伝子操作をしていない不適正者。優秀な遺伝子を持った者だけがなれる宇宙飛行士の夢を諦めなければならなかった。しかし、彼は事故に巻き込まれ歩けなくなったジェロームの身分を借りることで宇宙局の局員になることが出来たのであった。

見事、宇宙飛行士への切符を手にしたヴィンセントだったが、上司の殺人事件をきっかけに自身の正体が明かされる危機が迫る。

 

感想

この映画を初めて見たのは高校の心理の選択授業だった。

試験官ベイビーについての考えるきっかけになって欲しいとのことでの視聴だったが、普通にめちゃくちゃいい映画だった。

自身の限界は自分で決める。限界なんかない。

私も同級生も強く感銘を受けた。

 

が、しかし。

ヴィンセントの正体が周りに発覚するきっかけとなる殺人事件。

この事件の凶器が私の中で一番の問題だった。

 

上司の脳天をガツンと打った問題の品、これがパソコンのキーボードなのだ。

 

当たり前のように血まみれのキーボードと衝撃で飛び散ったボタン。そして、真顔でジップロックにしまう警察官。

おかしいだろ。

私はこのシーンを見たとき動揺した。一緒に見ている同級生たちも驚いただろうと咄嗟に薄暗い教室の中を見回した。が、しかし、誰も驚いてない。真剣な眼差しで映画を見ている。

まじか。私の脳裏にはその言葉だけが浮かんでいた。

 

なぜだ。なぜ、もっと殺しやすいもので殺さない。

百歩譲って殺人現場が宇宙局の中、そして計画的な犯行でなかったのだとしても、キーボードよりは確実に殺せる品があるはずだ。体力測定のためのランニングマシーンとキーボードだったら、絶対前者の方が殺せるだろ。

あと、殺された上司はヴィンセントの身分詐称を告発しようとしていて、それを見かねた宇宙船船長が口封じのため殺したのが動機なんだが、ばれちまったじゃねーか。墓穴を掘るな。せめて、他人のキーボードで殺せ。なぜ、よりにもよってヴィンセントのキーボード使うんだ。しっかりしろ。

犯行に使われたキーボードからヴィンセントの毛髪だか唾液だかが見つかり、容疑者として浮かび上がり、ヴィンセント、ピンチ!!!!!という物語的に重要なターニングポイントなのだろうがやっぱり、キーボードじゃなくていいだろ。

ヴィンセントが使ってたランニングマシーンでも別によかっただろ。

 

その後、何が起きても心は完全にキーボード殺人事件に持ってかれてしまった。

ヴィンセントと、優秀なヴィンセントの弟・アントンが泳ぎを競うシーンとかすごく胸を打たれるのだけど、脳裏に赤いキーボードがちらついて仕方がなかった。

 

教室での上映が終わり、部屋が明るくなると皆一様に目を腫らし、涙を目元に溜めていた。私はとても悲しくなった。

こんなにもたくさんの人が心を揺り動かされたのにも関わらず、私はキーボード殺人事件で脳天をぶち抜かれただけ。

私は家に帰って、自分の心の浅はかさに胸を痛め、その夜泣いた。